おじさん。

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菓子作りが得意なので、シフォンケーキを焼いていった。 平井さんと北島さんは、遺跡の実測ということで、ここしばらく姿を見てなかった。 実測室には、星村さんただ一人だ。 3時の休憩の時に、星村さんにシフォンケーキを持っていった。 星村さんは雑誌を読んでいた。 「差し入れです。」 星村さんにシフォンケーキを渡して顔をあげかけると 星村さんの背後に、男性が立っている。 ポロシャツ姿でネームプレートをかけている。 館長は、たまにこういう格好をする。 (やばっ、館長いたんや!館長の分ないで) と、思って顔をあげると… この男性…顔がない。 顔がないどころか…透けている。 「…じゃ、私はこれで。」 ダッシュで作業室に戻る。 しばらくたって、先程見たものを話したくなり話してしまった。 すると、さっきのおじさんが 「呼んだか?」 と、いうように私の背後にいる。 話題を猫の話しに急展開。 要原さんは、にたりと笑う。 「さっき、いたんでしょう。」 「は、はい。」 「その人ね。博物館の職員だったの。」 「お亡くなりになった方?」 要原さんは、再度にたりと笑った。 「鈴森さんてっいう、受け付けのおばちゃんが去年まで働いてたんだけどね。鈴森さんも見たんだって。多分、同じ人でしょ」
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