人知れず刻は流れる

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 桜皇学園高等科一年ハ組… 「朱里ちゃん、昨日寮生の…えーと、二年の特殊防衛科の人が、変なもの見たらしいですよー」 「あら、学園の敷地内に裸族でも出ました?」  フリルをあしらった、ロリータ風セーラー服の女生徒が、ハイカラさんスタイルの女生徒に話しかけ、その答えに笑う。 「学園に裸族って!…女子寮内になら出没するよね…」  桜皇学園の高等科は、何十種類のバリエーションがあり、基本生徒が自分の好みに会わせて着る。例えば、小柄で童顔な如月千代乃は、ロリータ風セーラー服。例えば、プロポーションがちょっと控え目な鳳凰院朱里は、スタイル補正のしやすい深紅の矢羽模様の着物に紺色の袴に、ショートブーツのハイカラさんスタイルといった風に。 「で、何が出たんですの?」 「御霊らしき影と女王様」  自信満々に答える千代乃に、朱里の手刀がおでこに当たる。 「何すんのー!」 「学園内に御霊が出たら、第一級霊災でしょ!避難勧告出るでしょ?」 「あ…そか…」  おでこを擦りながら、千代乃がうなづく。 「気鬼だったのでは?」  気鬼は所謂、浮遊霊と呼ばれる存在だ。それに対し御霊とは、強い意志と超状現象を伴う力を持つ、霊の事を指す。 「だとしたら、その女王さまも気鬼を狩りに来た、特殊防衛科の先生とかじゃありません??」 「…特殊防衛科の先生、男だよ」  千代乃の言葉に、朱里はおもわず想像して、飲んでいた豆乳を吹きそうになった 「それもそうでした…」 .
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