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本当は『幼なじみ』なんて可愛い言葉では表したくない相手なのだけど、下手なことを言って何かされても困る。
何年隣に居たってコイツは理解出来ない生き物なのだ。
――早瀬 凪
それが奴の名前。
「一緒に行こうかと思って。学校」
「……学校?一緒に?」
謎の発言に眉をひそめる。
言っておくが私と凪は同級生どころか同じ学校でもない。
……というか、この間まで大学生だった筈だ、この男は。
「自分の常識の無さにやっと気付いて高校通いなおすことにしたんだ?」
「ちゅー以上をお望みだな?お嬢さん」
軽い冗談(いや結構本気だったけど)は相手に通じなかったようで、一旦離れた顔が無表情で徐々に迫ってくる。
さっきまでの笑顔は何処に消えたのか。……いや違う、さっきまでの笑顔こそが不自然だったのだ。
しばらく会っていなかったから忘れてたけど、無表情がコイツの基本形なんだ。
「……あ、凪、……ごめんね?」
自分的上目遣いで弱々しい声を出せば、動きを止める男。
昔からこうなのだ。
年齢より幼い顔の所為か、私が甘えたような態度をとれば凪は黙り込む(きっとロリコンだよこの人)。
「……あー、いいや。とにかくほら、行くぞ」
手を握られて、外に引っ張りだされる。
子供扱いはいい加減にして欲しいものだ。小さい頃に遊んだ記憶しか無いんだろうか。
「凪さーん。だから、なんで学校?」
握られた手をどうやって振りほどこうかと画策しながら尋ねると、ピタリと立ち止まり振り返る。
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