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「どうしたんですか?双識さん。そんなんじゃ俺は、あなたについて行く事が出来ない」
「おいおい若人、そんなに焦るものじゃないよ。私はここからの盛り上げ方に定評があるんだからね」
そういう双識は早くも肩で息をしている。
対する、小暮は特に呼吸が乱れた様子が無い。
現時点、いくつかの分野で小暮に劣っている事を双識は自覚していた。
単純な筋力、そして持久力、少なくともこの二つは敵わないと。
まだ、総合力で格段に自分が勝っているとはいえ双識はこの事実に衝撃を受けた。
「やれやれ、やっぱりタバコはやめた方がいいのかな?」
「タバコ、吸ってるんですか?」
「ああ、君は嫌煙家なのかい?」
「別に毛嫌いしてるってわけじゃないですけど吸いませんね、一流のスポーツマンが身体能力を落とす様な事しませんよ。単純に、タバコは健康に悪いからやめた方が良いと思います」
「よく聞く台詞だ。私は逆だと考えるのだけれどねえ」
「はい?」
「タバコが健康に・・・という事だよ」
双識の言っている意味がよく分からず、小暮は会話を打ち切り再び構える。
そして、駆ける。
やれやれ、と双識は思う。
そして何度目かの小暮のタックルを受けた。
レスリングにおいてタックルは基本中の基本である。
前傾の低姿勢で下半身の瞬発力を駆使し、相手に向かって体当たりをかます。
そして両腕だけではなく全身で、根こそぎ刈り取る様な勢いで浴びせ倒す。
バリエーションは多岐に渡るが基本はこんな所だろうか。
双識は何とか倒されないように、その長い足を巧く使いながらバランスを取っていた。
そして、今回も何とか逃れる事に成功する。
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