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そして、年を重ねて妹のあの言葉の重みを少ずつ理解していった。
四歳の女の子が、両親の事故死という現実に直面しそれを乗り越え、ただ泣くことしか出来なかった兄の支えになる。
純菜が小暮にとって、この世で代えの効かない唯一の存在になるのはしょうがないことだった。
だから、小暮は自分の弱さを恨んだ。
ただ、泣き言をわめき散らし、現実から目を逸らす事しかしなかった自分が許せなかった。
その気持ちは、妹を誇りに思うのと同じ質量で、自分を追い込んだ。
だから、強さを求めた。
単純な強さ。
何事にも負けない強さ。
自分を信じる強さ。
もう、同じ過ちを繰り返さないように。
もし、似たようなことが起こっても今度は自分が妹の支えになれるように。
「お兄ちゃん、今日は頑張ってね」
「うん?ああ」
小暮は純菜がいる横で、集中力を高めていた。
それを妹の一言で現実に連れ戻される。
小暮にとって純菜との会話は、集中力を高めるのと同じくらい大切な事だった。
だから純菜と会話をする。
なあに時間はまだあるのだし、大丈夫だ。
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