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「なあ純菜、さっきも聞いたけど、どこで何をしてたんだ?」
「うーん」
純菜はあごに手を当て、遠くを眺めるように思い出そうとする。
考え事をする時の純菜の癖だ。
真面目な純菜は、どんな些細なことでも、このように真剣に考えて答えてくれる。
普段は可愛らしい妹だが、思考するときの純菜は美しい。
小暮はこの表情も大好きだった。
「お兄ちゃんの邪魔しちゃ悪いと思って、館内を色々探索してたんだ。すると懸命さんに偶然出会って、お話してた」
「何?そういえば懸命はさっきここに来たとき、純菜と会ったとか言ってたな。駄目だろ、あんな凶暴な男と関わったら」
「えー?そんなことないよ。懸命さん優しいよ!」
それは下心があるからだよ!
とは、小暮は言わない。
そういう類の話は純菜が知る必要などないと思うからだ。
というか、知っていて欲しくないというのが本音なのだけれど。
純菜との会話で小暮は改めて痛感する。
「純菜は幸せにならなければならないのだ」と。
もはや、これは彼女に課せられた義務と言っても過言ではないだろう。
それは一生を掛けて達成する命題だ。
そのためにも自分は強くならなければならないのだ・・・
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