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「ねえ、お兄ちゃん。私、やっぱりもう少し出とくよ」
純菜は控えめな口調だが、ハッキリと自分の意思を込めて言った。
「だって、お兄ちゃんは試合前に自分の時間がないと実力出し切れないでしょ?だから出とくよ」
「そんなこと・・・ないよ」
そんなことは、あった。
小暮は純菜との会話のお陰で試合前とは思えないほどにリラックスすることが出来た。
しかし、行き過ぎた脱力では全力を出し切れないのも事実。
適度な緊張感は、実力を出し切るのに必要不可欠なものだった。
「今、お兄ちゃん無理してる。純菜、大好きなお兄ちゃんの事だから分かるよ。そりゃあ、もっとお話していたいけど、一人になるのは寂しいけれど・・・その分、応援するよ!お兄ちゃんが懸命さんにも、誰にも負けないように一生懸命応援する!!」
純菜は小暮の前で小さくガッツポーズをとりながら、そう宣言した。
「そっか。じゃあ、応援頼むな純菜」
「うん、任せてよ!」
純菜はVサインを作って笑顔で答えた。
それを見て「敵わないな」と小暮は考える。
純菜は部屋を出ようと小暮に背中を向けて歩き出した。
そこで、ふっ、と何気なしにある疑問を聞いてみた。
「なあ、純菜。『強い』ってなんなんだろうな?」
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