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小暮は急いで廊下に出ようとする。
「おいおい。小暮君どうしたんだい?そんなに慌てて」
双識は腕を掴んで、ドアノブを回そうとする小暮を止めた。
内心、小暮は双識の想像以上に強力だった腕力に驚愕した。
このカマキリのように細長い腕に、これほどの圧力をかけられるとは。
「どうしたって、警察に連絡するんですよ!」
「うん?何でだい?」
心底分からない、という表情で双識は問いかける。
「いや、だって俺と純菜がここにいたことを知っていたのは懸命しかいなんだ。だったら懸命の仕業に違いない」
「何を言っているんだい?小暮君」
疑問に満ちた表情から一変、双識は苦虫を噛み潰したような表情になった。
表情の豊かな人だな、と現在全く関係のない事を小暮は考える。
渋い顔つきのまま、双識は喋り出す。
「いいかい小暮君。何の証拠も無いのに、たったそれだけの事で知り合いを疑うのは良くない事だ。しかも、懸命君とやらは、君の親友なのだろう?だったらなおさらだ。それに君の態度もさっきからよく分からないなあ。まあ、いい」
双識は足を肩幅に開き両手を腰にあて、やや前傾姿勢になった。
どうやら長話になるらしい。
「最初からキチンと話そう」
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