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「まず彼女」
双識は、純菜という少女だったモノを指差した。
「全くもって惨たらしい姿だ。直視に耐えない。それでも、嫌々でも観察していると分かることもある。例えば、彼女はどういう経緯を経てこのような姿になったのだろう?」
「それは、その、何か鈍器のような物で頭を叩かれたんじゃ?」
「ブー!」
双識は、口を窄めながら否定した。
本人はどういうつもりでやったのか定かではないが、成人男性の行うそれは、決して可愛いものではなかった。
「頭蓋の損傷部分は、地面に面している。つまりこれは、叩き付けられた、という事を意味するのだよ。しかも、床の跡を見る限り一撃だけ。いや、一回だけと言うべきかな。ともかく、これは凶器の類を使用したという事はないね。まあ、ここまでは比較的簡単な話だよ。彼女に直接触れなくても推測出来る。さて、次のステップだ」
双識は腰から右手を離し、部屋の四方を指差した。
「彼女が部屋の隅々まで散らばっている。ああ、君も彼女の一部分を踏まないように気をつけたまえ。あとで、色々と面倒になるからねえ。さて。これはスゴい破壊力だよ。この損傷には余程の位置エネルギーが必要だ。二、三十メートル。おそらく、ビル七、八階の高さは必要だろう。しかし、この部屋の高さはどんなにサービスしたところで二メートル半という所だろう。だから大半の検死官はここで首を傾げるだろうな。この部屋では彼女をここまで壊すのは難しい。いや、不可能だと言っていい。こうするには人外の力が必要になってくるからねえ」
ここで双識は、まじまじと小暮を眺めた。
小暮は何も語らない。
ただ、既に部屋から出ようとはしていないので双識は話を続ける。
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