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「ただし!逆に言えば、人外の力を持つ者ならば、彼女をこのような姿にする事が可能ということだ!例えば、私の愛すべき家族にも何人か心当たりはある位だからねえ」
「なるほど。大した推理です」
ここで初めて小暮は、意見を述べた。
全くの無表情で、何の感情を込めない声で。
「いやいや。こんなもの推理と呼べる程大したものではないよ。正直に言おう、大昔に似た様な死体を見た事があるんだ」
「ふーん。そいつはなかなか嫌な経験だ。いや、でも今活かされてるということは、良い経験だったのかもしれないですね」
「間違いなく嫌な経験だよ。思い出したくもない思い出さ。まだ私が『自殺志願』と呼ばれる以前の話。ただ、『二十人目の地獄』とだけ呼ばれていた頃の話でねえ」
「『自殺志願』?『二十人目の地獄』?」
「ああ、ごめんごめん。小暮君には分かるはずも無い話だった」
謝りながら双識は、バツの悪そうな表情を浮かべた。
他人に分からない話題を出してしまった自分の話術を恥じている様子だった。
「そう。例えば相手の真後ろに立ち、彼女の右脇から自分の右腕を差し込む。それから抱きつく様な感じで左の襟部分を掴みながら、背筋をフル稼働しながら反り投げる。これは何て言うんだったかなあ?」
「裏投げ、ですよ」
「そう、それ!裏投げだ!まあ、私が投げた相手は似た様な姿勢の死体に出来上がったけれども、ここまで壊れてはなかったよ。私の力ではこんなことは出来ないからねえ」
どうやら、過去に見た「似た様な死体」は双識本人が作ったものらしい。
「それともう一つ。言いたい事があるんだ」
双識は人指し指を立てながら、軽い笑みを浮かべた。
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