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「私はひどく臆病な人間でね。人の気配に敏感なんだ。まあ、いき過ぎた職業病みたいなものなんだが。私がさっきこの周辺を探索している時、大きな衝撃音が聞こえてねえ、今思い返せばあれこそが純菜ちゃんを死に至らしめた破滅の音だったのだろう。まあ、今さら悔いてもしょうがないのだけれど、断言しよう。この零崎双識はあの瞬間にこの部屋以外から人の気配を感じなかった」
あまりにも、不確定で不明確で不特定な意見だった。
その何の効力も持たない意見を聞いて小暮はしばらくの間、呆れていた。
が、我に返り否定しようとする。
「そう!そんなのは全く意味のない、ただの主観的な話だ」
小暮よりも先に双識自ら、今さっき言った自分の意見を否定した。
「こんな話ならさっき言った懸命君だっけ?その男が殺したという話の方が筋が通っているだろう。まあ、両方とも何の証拠もない話だけれどもね。それでも話を進めさせてもらおう。いいかい?私はもう全部分かっているのだよ」
そう、零崎双識はこの部屋の惨劇を目の当たりにした時点で、だいたいの事実には気付いていた。
そして、室内に進入した時には、何の証拠もないのに直感で確信していた。
「小暮君、君は実の妹を殺したのだろう?」
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