「アスリートの限界」と「零崎のススメ」

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「思いつきで行動したには良い収穫があった。今日はここに来て、本当に良かったなあ。うふふ」 ここは、とある地方都市の市民体育館。 三階建ての立派な造りになっていて、この街がスポーツ環境に力を入れているのが分かる。 普段ここは、学生や社会人が合同練習を行ったり、市町村のイベントを行う時に開放されていた。 しかし、今日は様子が違った。 おそらく、これほど会場に人が集まったことはなかったであろう。 なぜなら、アマチュアレスリングの由緒ある国際大会の予選が行われているからだ。 選手、スタッフ、マスコミなど。 会場は大量の人でごったがえしていた。 その大衆の中、明らかに異彩を放つ男が一人、いた。 男は、三つ揃えの背広を着用していた。 痩身長躯どころか針金細工のような骨格で、手足が不自然なほどに長い。 髪型はオールバック。 銀縁眼鏡の奥の両目は柔らかく緩んでいる。 ジャージやカジュアルな服装が多い中で男の服装は明らかに浮いていた。 男は、零崎双識といった。
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