「アスリートの限界」と「零崎のススメ」

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「今まで私は『スカートの下にはくスパッツ』というものを邪道だと毛嫌いしていたけれども、少し勘違いしていたかもしれないねえ。スカートの中のスパッツは間違いなく、邪道だ。でも、『スパッツだけはく』というのは、アリだ」 どうやらこの零崎双識という男は下心在りでレスリング観賞に来ていたらしい。 「差し当たり、この素晴らしい発見を子荻ちゃんに教えてあげよう、きっと驚くに違いない。いや、ひょっとするとスパッツをはいてくれて私の考えが正しいのかどうかという実験に協力してくれるかもしれないねえ。一刻も早く子荻ちゃんでこの仮説を確かめたいなあ。うふふ」 午前の部(女子の予選)を堪能し、目的を達した双識は足早に会場を後にしようとしていた。 彼は、細い体と長い足を優雅に駆使し多くの人がいる館内を出口に向かっていた。 が、突然その歩みを止める。 「うん?おやおや。近くに『家族の気配』を感じるなあ。これはおかしな話だ。私が今日ここに来ることは誰も知らないはずだ。なんせ思いつきで寄ってみただけだからねえ」 ここで一つの思案に達した双識は、その虫も殺さないような笑みを崩し、眼鏡の奥の瞳に若干の焦りを浮かべた。 「そうなると・・・新しいファミリーが出来るということかな?まずいなあ、こんなに人がいる中で目覚めようとしているなんて。全く、これ以上問題児が増えるとなると長兄として非常に辛いものがあるよ。あっ!でも妹が出来るかもしれない。だったら問題なしだ。問題どころかこんなに嬉しい事は無い!よしよし、まだ見ぬ愛すべき妹よ!優しい優しいお兄ちゃんがすぐに迎えに行きますからね~」
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