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「はるー!」
「はるみちゃあん!!」
大雨が降りしきる中、男と女が雨具も着ずに誰かを探している。
近くには川があり流れも水嵩もひどくなるばかり。
「こんなことなら、俺が…、ちゃんと…」
「桐生さん!
今はそんな事言ってる場合じゃないです!」
走っていた足を止めて失意に暮れる桐生と呼ばれたびしょ濡れの男。
それを叱咤する、こちらもびしょ濡れの女。
「今はとにかく、はるみちゃんを探さないと!」
先を急く女は、腕を引っ張ってどうにか桐生を動かそうとする。
それに応える事が出来ずに、ただただ、泥に塗れた自分の靴を眺める事しかできない。
「はるはここだよ…?」
突然、自分の求めていた人物の声が聞こえて、勢いよく顔を上げる。
しかし、目の前には誰もいない。
さっきまで一緒にいた女性さえも。
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