土方×千鶴

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土×千 土方目線 外に出ると、あいつはそこにいた。 大きな桜の木。 その桜は、あの時もこのくらい満開だった。 千鶴に声をかけようと近寄る。 そこで……俺の足は止まる。 そこにいたのは紛れも無く千鶴であるはずなのに、千鶴でない何かだった。 「……………!」 絶句。 目が離せなかった。 千鶴の横顔があんなに綺麗だとは思わなかった。もう大分見慣れているはずなのに。 そこへ、千鶴が俺に気づく。 「あれ?……土方…さん?」 「………………」 「土方さん?どうされたんですか?」 「………………あっ い、いや別に……は、花に見とれてただけだ!」 「……そうですか」 笑った。 千鶴が笑う。 それだけでこんなに嬉しいものだとは思わなかった。 ああ。 俺は千鶴にはいつも驚かされてるな。 意外なことばかりだ。 でも一番意外なのは…… 「でも意外です」 「? 何がだ?」 「土方さんが花に見とれていたことです」 「俺は何を見ても眉間にしわを寄せると?」 「い、いえ…そういうことでは無いのですが…」 ああ。困ってるな 何だか焦ってる千鶴は可笑しい。 「……くっくく……!」 「あっ!ど、どうして笑うんですか!?」 「はははっ悪い、悪い」 「もうっ………でもやっぱり、土方さんには桜が似合いますね」 「そうか?」 「はいっ」 「そうか…」 千鶴が満面の笑みで俺を見る ああ。また俺顔赤いんじゃねぇか? 「こりゃあ絶対言えねぇな…」 花はお前だ、なんてよ。 「何がですか?」 「いや、何でもねぇ」 「そうですか?変な土方さん」 そう言ってクスクスと笑う。 ……一番意外なのは……俺はお前にこんなに惚れていた……ということだ。
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