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まだ小さかった私は、突然現れた黒い影から必死に逃げていた。他の人達は、友達は、先生はあの化け物達に飲み込まれてしまった。
悲鳴が耳の中で反響する。夢だったらよかったのに。これが夢だったら。私は夢を見ているだけなんだ。早く目を覚まして――
「おい!」
突然大きな声が響く。こっちはダメだ、と感覚的に判断して方向を変えた。あの化け物達は他人の声を使って人を騙すんだ、お姉ちゃんが言っていた。
鬼狩と呼ばれる組織に入っているお姉ちゃん。強くて、かっこよくて、優しくて。勇敢で。私とは正反対のお姉ちゃん。
「ユウイ!? どこにいるの!? 返事をして!」
――あっちでお姉ちゃんが呼んでる。私を、呼ん、で。
体が動かない。ゆっくりとお腹の方を見ると、黒い影が私を貫いていた。遅れて痛みがやってくる。
――お姉ちゃん、どうして。どうして私を助けてくれないの?
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