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丸岡書店から来た、千秋の担当は、入社2年目の女の子だった。
「…あの、今度、吉水先生の担当を、言いつかりました…(ゴクッ)…よ、横山す、昴です!」
俺は、頭をポリポリと、かきながら、あちゃー、こりゃ、また、難敵が来たな…と、思った…。
自己紹介で、こんなにガチガチじゃ、やばいぞ…。
杉山さん曰く、仕事に対する情熱はあるが、空回りばかりらしい…。
「悪いけど、ちょっと鍛えてやってよ。
担当仕事については、百戦錬磨でしょ。
速水さんなら、なんとか、彼女を、使えるように出来るんじゃないかと、思ってね。
しばらく、吉水先生専属にしとくから、よろしくね…。」
最初と、話が違うだろ…。などとは、口が裂けても言えない…。
「はじめまして。吉水の夫で、この事務所の責任者をしています、速水です。
杉山さんから、あなたに、担当編集のイロハを教えてやってくれと、頼まれているんで、よろしく。」
「…あのう…やっぱり、私って、厄介払いされたんでしょうか…?」
“厄介払い“という言葉に、俺は、ムカついた。
「今の一言、撤回してもらおうかな…横山さん。」
「…えっ?」
「まがりなりにも、千秋は、丸岡の文芸賞を取ってんだぞ!
その担当に、抜擢されてる人間が、厄介払いな訳、ねえだろう?違うか?…さあ、答えろよ。」
「…すいません。…私、入社以来、ドジばっかりやって、しばらく、仕事外されてたんです…だから…。」
「まず、その典型的な落ち込みスパイラル思考止めろ!…それと、姿勢真っすぐ、下向くな!」
「あ、はい!」
「…お前の席、その右側のデスク貸してやる。
千秋を呼ぶから、そこ座って、待ってろ。」
上の自宅に帰っている千秋を、事務所に呼び戻す。
「こんにちは。はじめまして。あたしが、吉水千秋です。」
挨拶をする昴は、またもや、緊張で、しどろもどろになってしまった。
「おいおい…挨拶から、矯正かよ…。」
先が、思いやられる…。
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