PRESENT

3/53
前へ
/216ページ
次へ
「こんにちわ!」 「お邪魔します。」 元気の良い声が、二つ入ってきた。…その瞬間。 「…ぅきゃあ!」 悲鳴に近い反応を、昴は、やらかしてくれた。 「横山ぁ!ドア開く度に、そんな声出す気か?お前は!」 「す、すいません!」 驚いて立ち尽くす二人に、声をかける、 「…和樹も、郁美も、びっくりさせてごめんな。」 「…大丈夫ですよ。それより、こちらの方は?」 「丸岡書店の横山昴。一応、千秋の担当だ…色々、問題はあるが…。」 「はじめまして、僕は、小川和樹です。バイトで、ここの電話番やらせて貰ってます。」 「私は、園田郁美です。よろしくお願いします。」 「…二人は、身内みたいなもんだから。」 「はい。…あの、こちらこそ、よろしくお願いします。」 「和樹、今日だけの臨時バイトするか、郁美と。」 「郁美と?…どうする?」 「和樹がいいなら。」 「…やります。何するんですか?」 「横山に、千秋の作品教えてやってくれ…担当のくせに、丸岡の新刊しか、読んでねぇときた…和樹や郁美の方が、詳しいくらいだろ…。 横山…大学生に教えられるなんて、恥ずかしいことだぞ…お前は、まがりなりにも、出版社の人間なんだからな。心して、学べ。 後な、ここは、丸岡と違って、小さな個人事務所だ。入って来る人間は、限られてるから、覚えろ。 和樹、悪いが、そいつも、教えてやってくれ。」 そういって、書庫の鍵を、和樹に、投げてよこす。 「了解。…横山さん、こっちの書庫に、行きましょうか。」 「…悪いな、郁美。せっかく来てくれたのに。 和樹のレクチャー終わる頃には、千秋の原稿も、あがると思うから。夕飯、一緒に食おう。」 「はい。」 元気で、可愛らしい返事に、俺は、ちょっとだけ満足した。
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

678人が本棚に入れています
本棚に追加