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「こんにちわ!」
「お邪魔します。」
元気の良い声が、二つ入ってきた。…その瞬間。
「…ぅきゃあ!」
悲鳴に近い反応を、昴は、やらかしてくれた。
「横山ぁ!ドア開く度に、そんな声出す気か?お前は!」
「す、すいません!」
驚いて立ち尽くす二人に、声をかける、
「…和樹も、郁美も、びっくりさせてごめんな。」
「…大丈夫ですよ。それより、こちらの方は?」
「丸岡書店の横山昴。一応、千秋の担当だ…色々、問題はあるが…。」
「はじめまして、僕は、小川和樹です。バイトで、ここの電話番やらせて貰ってます。」
「私は、園田郁美です。よろしくお願いします。」
「…二人は、身内みたいなもんだから。」
「はい。…あの、こちらこそ、よろしくお願いします。」
「和樹、今日だけの臨時バイトするか、郁美と。」
「郁美と?…どうする?」
「和樹がいいなら。」
「…やります。何するんですか?」
「横山に、千秋の作品教えてやってくれ…担当のくせに、丸岡の新刊しか、読んでねぇときた…和樹や郁美の方が、詳しいくらいだろ…。
横山…大学生に教えられるなんて、恥ずかしいことだぞ…お前は、まがりなりにも、出版社の人間なんだからな。心して、学べ。
後な、ここは、丸岡と違って、小さな個人事務所だ。入って来る人間は、限られてるから、覚えろ。
和樹、悪いが、そいつも、教えてやってくれ。」
そういって、書庫の鍵を、和樹に、投げてよこす。
「了解。…横山さん、こっちの書庫に、行きましょうか。」
「…悪いな、郁美。せっかく来てくれたのに。
和樹のレクチャー終わる頃には、千秋の原稿も、あがると思うから。夕飯、一緒に食おう。」
「はい。」
元気で、可愛らしい返事に、俺は、ちょっとだけ満足した。
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