PRESENT

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事務所の側の駅前で、谷口さんの車を見つけた。 「こっちだよ。」 「…すいません。」 助手席のドアを、開けてくれる。 「どうぞ。」 ちょっと緊張…。 「…たまにね、打ち合わせに使うカフェレストランが、あるんだ。 まあ、速水に教えて、もらった所なんだけどさ。 そこで、いい?」 「は、はい。…お、お任せします。」 「…ははは。初デートじゃないんだから、そんなに、カチカチになることないだろう?」 だって、だって、私に気があるって、臆面もなく言ってのけてる人の車に、二人っきりなのよ…。 緊張だって、するわよ…。 「…昴ちゃんって、男の人と、ちゃんとお付き合いした事ないでしょう。」 「い、いけませんか!!」 なんか…思わず、叫んでいた。決して、谷口さんが、私を馬鹿にしたとか、見下したとか、そんなつもりで言ったんじゃないって、わかってるのに…。 谷口さんに、言われた事が、図星だったから…。なんか、悔しかったから…。 「ああ、ごめん…。気、悪くした?」 首を横に振り、すいませんと、謝る昴に、谷口も、どう声をかけるべきか、迷って…。 沈黙のまま、二人を乗せて、車は、走り出した…。 しばらく走って着いたのは、速水と千秋が、婚約パーティーをした、カフェだった。 「…着いたよ。」 素敵な店だと、昴は、思ったが、谷口には、何も言わなかった…。 黙って、谷口の後ろを、ついていく。 案内された席で、谷口が、 「…好き嫌いある?…時間かかるかも知れないし、軽いもの頼むけど、なんでもいいかな?」 と、何もなかったかの様に、話し掛けてきた。 これでも、空気は読める。素直に、ここは、返事するべきよね…。 「…特にはないですよ。」 昴の答えを聞いてから、店員に、メニューを指差して、注文をする。 飲み物を聞かれて、珈琲と紅茶を谷口は、頼んだ…。 もしかして、私が、珈琲を苦手なの覚えてくれてる?だって、私に、聞いてないし、私、答えてない…。 ニコッと、笑ってくれた谷口さんを、私は、改めていい人だと、思った…。
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