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「ん?…んん?」
昴が、首を傾げる。
「どうかしたか、横山?」
「いえ、別に…。」
「別にって、顔じゃなかっただろ、今。」
「いえ、本当に…。」
「…だから?」
「はぁ…。えっと、今日は、速水さんの雰囲気が違うなって、思ったんですけど…。
いつもと、言うこと変わんないし…何だろうなって、思いました。以上です。」
「雰囲気ね…。なら、もっと、いつもと違う奴が、程なくやって来るから…。」
しばらくすると、扉が開いて、千秋が入ってきた。
「おはよう。横山さん♪」
「お、おはようございます。先生…。」
千秋に挨拶した後、速水に向かって、小さな声で、
「一体、先生どうしたんですか?
朝は、どっちかっていうと、ダメでしょ…。
なのに、今日は、シャッキリしてるし、ハイテンションだし、鼻歌を歌ってますよ?」
「そうなんだよな…。上機嫌なのは、いいんだけど。
感情の起伏どっちかっていうと、あいつ、激しいからなぁ…。
落ち込んだ時が、怖いんだよな…。」
「…なんの話?交ぜて、あたしも!」
速水は、何事もなかったかの様に、千秋を話に加えて、さっさと、仕事に切り替える。
こういう手際の良さは、見習わなくては、と、昴は、思う…。
「新作の為に、玉城さんのグラスを、横山に見せるんだろう?…違ったか、千秋?」
「ううん。あたし、昨日、頼んだよ。…今、いいの?彰。」
「…上、行くぞ。横山、家に入れてやる。」
「えっ、本当ですか?!」
うわぁ、何だか、ドキドキするなぁ…。吉水先生の家だよ。自宅だよ。
エレベーターで、最上階へ向かう。
下りると、速水さんが、玄関の鍵を空けてくれた。
「…入れよ。」
「どぞ、どぞ、遠慮なさらずに♪」
速水さんと吉水先生の二人に、言われて、一歩入る。
「うわっぁ…素敵。」
「褒めてくれて、ありがとう。
じゃあ、横山さんは、ここに、座って待っててね。」
リビングの応接セットは、見るからに、上等そうな物だ。
座ったソファは、フワフワ♪…私は、もう夢心地だった。
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