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「美味しい紅茶葉を、手に入れたから、煎れてあげるね。」
と、千秋は、実に機嫌良く、キッチンで、お茶の用意をする。
その間に、速水が、グラスを取りに、部屋に入っていく。
「俺の雰囲気が、いつもと違うときたか…。
あいつ、案外、感受性が、強いのかもな…。」
速水は、昴が、下で言ってた言葉を思い出して、独り言を言うように、呟いた。
目の前の扉を開けて、小さな箱と、それより少し大きくて長い箱を出してきた。
さて、千秋が、ご機嫌な訳…それはもう、昨日の夜、速水が、帰ってきてから、朝まで、ずっと、構ってもらったからに決まってる。
朝までなんていうのは、今までだって、何度もあった事だが、大抵は、どちらも体力限界まで求めあって、力尽きるパターン…。
けれど、昨日は、お互いの存在…暖かさを確認しあっていたというべきか…。
すごく緩やかで、すごく奥深い快感…。激しくない分、いつまでも、何度でも続く余韻…。
気付いたら、朝だった。
体も、いつもみたいに、重くない。気分も、軽い。
千秋は、朝食は、自分が作るから寝ていてと、速水をベッドに残して、キッチンに立った。
それからずっと、あの調子だ…。
ふんふんふん♪
箱を手に、速水が、部屋から出てきた。
箱をリビングのテーブルに置くと、誰も触るなと、言って、キッチンへ行く。
千秋と入れ違いに、キッチンに入った速水は、冷凍庫のストックボックスから、氷を取り出し、ミネラルウォーターを片手に戻ってきた。
テーブルの上に置いた箱をそれぞれ開けると、一揃えの青いグラスと、緑っぽいグラスが一つ。
そっと出す。窓からの光だけでも、結構、綺麗だ。
「お前ら、割るなよ…。
今の状態でも、綺麗だけど、こうすると、もっと綺麗だ。」
グラスに、氷を入れ、水を注ぐと…テーブルに映る、グラスの半透明な影が、ゆらゆらと揺れる。
氷から溶け出したものが、流れを作り、揺らめきに、変化を与える。
「…綺麗…。」
「うん、綺麗だね。…ああ、あたし、沖縄、また、行きたくなっちゃう。」
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