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「こっちのね、緑っぽいやつ…これね、沖縄の珊瑚礁の浅い海の色なんだよ。
これ見た後でね、海に潜ったの。
一緒だったんだよ…色も光も。
もう、感動しかないの!」
たった今、見てきたことの様に、千秋は、昴に説明する。
「その海での感動を、あたしは、文章にしたいの。
そしてね、硝子細工っていう、小さい物の中に、感動をくれた海があるんだよ!こんな凄いもの作れる人、なかなかいないよ!
だから、みんなに教えてあげたいの…でも、ノンフィクションの文章じゃダメなの!
あたしは、文芸の世界に生きてる作家だから!」
力説する千秋に、昴は、びっくりした。
この数週間見てきた、千秋とは、明らかに違う顔だったから…。
これが、本物の作家・吉水千秋の顔なんだ…。
「…横山、こっからは、お前の仕事だ。
担当として、作家先生の気持ちに、どうやって応えてやる?
本に仕上げるまでに、お前が、やらなくちゃならないことは?
明日までに、企画書あげてこい。どの道、杉山さんに、出さなきゃならないだろう?
出す前に、チェックしてやるから…。」
『あいつは、基本、女には、優しい奴だよ。
だけど、仕事は別…。出来なけりゃ、女だって、容赦しないから。そういう奴なんだ。』
谷口さんは、私に、そう言った。あれは、速水さんの私に対してのスタンスだと思ってたけど…違うんだ…誰に対しても、そうなんだ…。
先生が、執筆以外の仕事に関して、速水さんに、全部を委ねる事が、出来るのは、プロの仕事が出来るからなんだ…。
速水さんが、求めてるのは、プロとしての妥協のない仕事、妥協のない文章…。それに、先生は、応える事が、出来るから…。
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