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これは、もしかしたら、夢なんじゃないだろうか?
本気で、俺は、そう思った…だって、俺の横で、昴が、小さな寝息をたてているんだぞ…それも、真っ裸で…。
ううぅ…頭が痛い。
…そりゃそうだろう…速水と、途中から、新城君が加わったとはいえ、どれだけ飲んだのか、わからん…。
ビールに、泡盛…しまいにゃ、焼酎も、いってた気がする…。
ここへ帰ってからも、飲んだよな…。で、速水を部屋に追いやって、それから…。
ああ…俺、何やってんだよ…もう、後戻り出来ないだろうが…。
夢でしたじゃ、すまないよな…責任とれんのか?
いや、その前に、もう一回確かめなくちゃな…昴の意志を…。
「…うぅん…ん?…えっ?」
どうやら昴も、勢いだけで、俺とやっちまった感だよな…。
「あ、あのぅ…美晴さん。私…。」
ちょ、今、なんて言った?“美晴”って言ったよな!
…下の名前だ。間違いなく、俺の。
今日の夕方までは、“谷口さん“だったのに…。
「…あの…えっと…美晴さん。私…眠っちゃったんですか…。ごめんなさい。」
「俺もだから、気にするなよ…。」
「はい。」
しばらく間があって、昴が、俺に、向き直る。
「美晴さん…お願いがあるんですけど…。」
「なに?言ってみて。俺にできること?」
「えっと…あの…東京に帰ってからも、仕事以外でも…その…会ってくれますか?私と…。」
いつもの緊張して喋れなかったり、どもっちまうのと違って、すごく遠慮した、不安げな喋り方…。
瞳が潤んでて、仔犬みたいで可愛い。
「…当たり前だろ。会うに決まってるだろ。
一番最初に、付き合ってくれないかって、頼んだのは…お前に、聞いたのは、俺なんだぞ。
せっかく、お前の手を掴んだのに、離す訳ねぇだろ!」
「よかったぁ。…夢じゃなくて、よかった。」
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