104人が本棚に入れています
本棚に追加
その短剣はまるで鞘に収まるかのように。
するりと、一切の抵抗を感じさせないほど滑らかに、あっさりとそこに収まった。
フェリジアの、十字架のちょうど中心。
心臓の位置へ。
深々と自分の心臓に突き刺さった短剣をどこか不思議そうに、そして少し驚いた表情で見つめるフェリジア。
ラファエルの背後へと伸びた右手が徐々に下がり、地面へ落ちる。
そして、自分の身に何が起こったのかを悟ったかのように、フェリジアは何故か満足そうに、微笑んだ。
ゆっくりと、瞼が閉じる。
長い睫毛が微かに揺れる。
本来彼女が浮かべていたであろう、優しい微笑みを残して。
どこか満ちあふれた表情のまま。
フェリジアは、永遠の眠りについた。
ラファエルの腕の中で。
ラファエルはそっとフェリジアの身体を抱き締め、彼女の耳元に何かを小さく囁いたようだった。
その言葉は、その表情は、背を向けるアルバートにはわからず、また遠くにいるティファとセロにもわからなかった。
長い、悲しい戦いに、本当の決着がついた。
忘れることができない、悲しい結末で。
最初のコメントを投稿しよう!