46:酒場の夜

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ティファがアルバートの言葉を引き継ぐ。 皿の果物は半分近くまで減っていた。 その量に呆れつつも、アルバートも手を伸ばして手ごろな果物を一切れつまみ、口へ放り込む。 「それに、行かなければならない所がある、とも言ってたしな。」 指についた果汁を舐め取りながらアルバートが呟く。 そして、何かを思い出したかのように、そうだ、と声を漏らす。 「ラファエルにここの店を教えてあったんだ。一度顔出してくれって。俺達が帰ってくる前に、ダークエルフの男が来なかったかい?」 クリフは顎に手を当て、うーん、と唸りながらここ数日来店した客の中に、該当する人物がいなかったかを思い返す。 「いや、僕は見てないね。ダークエルフであれば一目でわかるし、もしその正体を隠そうとマントとかを羽織っているのなら、それだけで印象はあるからね。ここ数日でそんな人物は、少なくともボクは会ってない。」 そこへ、エルガが簡単なツマミを持ってきてアルバートとティファの前に差し出す。 「エルガ、君はどうだい?」 毎日後片付けもあってか、最後まで店に残るエルガはどうだろうか。 クリフは厨房から出てきた妻に尋ねてみた。 「・・・その、ラファエル、という男か?」 エルガは静かな声で聞き返し、クリフと同じように考え込む。 「・・・その男かどうかはわからないが、一人それらしい人物は来ていたな。」 ティファ、アルバート、クリフの視線がエルガに集まる。
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