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ここでエルガは一旦話を区切り、グラスを取り出して氷を入れ、手近なところに置いてあるお気に入りの酒を注ぐ。
半透明の液体がグラスの半分まで注がれたやや強めの酒を静かに口へ運ぶ。
誰もが、エルガが続きを語り出すのを静かに待っていた。
そこへ接客を早々に切り上げたリオーネがその輪に加わり、先ほどと同じようにティファの隣に来てカウンターに寄りかかる。
店内にはまだ数名の客が思い思いに酒を楽しみ、それぞれの時間をすごしている。
「・・・それから、どのくらいの時間そうしていたかな・・・。」
片手に持つグラスの中身を眺めながら、再びエルガが語り出した。
その口元には、どこか楽しそうな微かな笑みが浮かんでいた。
・・・・・・
しばらく、二人で言葉を交わすでもなく、またエルガも詮索するでもなく、ただ静かにグラスを傾けた。
男の悲しみが如何ほどのものか、エルガには計り知れるものではない。
しかし、エルガはその男が抱く悲しみを、ここにいるほんのひと時でも和らげることができるのなら、と共に見知らぬ故人を偲んだ。
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