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翌朝。
エルガは自宅のベッドの上で、窓の外から聞こえる小鳥の囀りで目覚める。
まだ外は日が昇り始めたばかりで薄明るい。
隣には愛しい夫がすやすやと規則正しい寝息をたてている。
夫を起こさないよう、静かにベッドからすり抜け、毎朝の日課へと向かった。
寝巻きを着替え、動き易い格好になって自宅の裏手へと回る。
まだ朝靄の残る空気を大きく吸い込み、背伸びをする。
椅子代わりの丸太に腰掛け、手には小さな手斧。
足元には薪が転がり、隣にはその薪が山と積み上げられている。
毎朝の日課となった、店の準備。
さして苦とは思わない作業。
好きでやっていることなのだが、しかし夫は申し訳ないから、となにかと手伝ってくれる。
いつの間にか自然に役割分担のようなものが出来上がっていた。
そのうち夫も夢から覚め、この薪割りが終わる頃には朝食を準備してくれていることだろう。
夫も、最初は不慣れだった料理もいつしか手馴れたもので、最近ではなかなかの腕前を披露してくれる。
色んなことに思いを馳せながら、今日もいつものようにただ黙々と薪を割る作業に勤しんでいた。
コツを覚えると楽なもので、夢中になって、不思議と楽しくなってくる。
朝日が顔を出し、露に塗れた草木がきらきらと輝いている。
一息つこうと手を休めた。
ふと、街の外門から続く道に目をやると、ひとつの影がこちらへと歩いてくるのが目に映る。
遠くてその正体を覗うことはできないが、人ではなさそうだ。
なんだろう、と、その姿見ていると、それはどうやら一頭の獣のようだった。
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