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徐々に近づいてくるその獣は、子牛ほどの体躯を持っており、美しい銀毛は朝日の光を反射して輝いていた。
銀毛の獣は小走りで、まっすぐにエルガ目指して駆けてくる。
やがてその姿がはっきりと目視できる頃、口に皮袋を咥えていることもわかった。
そしてその正体がハイウルフであることも。
ハイウルフはエルガの近くまで来るとその歩みを止め、数歩離れた場所で静かに腰を下ろす。
そして咥えていた皮の袋を、そっと地面に置いた。
エルガは不思議そうにその美しい獣を眺めていると、獣もまた身動ぎもせずじっと座ったままエルガを見つめていた。
まるで皮袋を届けに来たかのように。
エルガは立ち上がり、ハイウルフへと近づき、前に方膝を付いて皮袋を手に取った。
ずっしりと重い皮袋の中身を見てみると、中にはおそらく取れたてであろう様々な果物が詰まっていた。
よく見かけるものから、貴重でなかなかお目にかかれない珍しい果物まで、色んな種類の果物が入っていた。
さすがに珍しい体験をしたことにやや驚き、小さく感嘆の声を漏らしてしまった。
「・・・マスターから、昨晩の礼だ、と。」
エルガの目の前に座るハイウルフが、静かに人語を発する。
ハイウルフが話すことにも少々の驚きを覚えたが、それよりもその言葉に思い当たる節があるのを思い出す。
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