49:風の色

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笑い声と、明るい口喧嘩の声が飛び交う。 ティファは目の前の果物に視線を落とし、いつかラファエルもこの輪の中に、と無意識に思ってしまう。 「・・・彼は、また来てくれるかな?」 騒がしいアルバートとリオーネをよそに、クリフがティファに優しく問いかける。 ティファは視線を上げ、クリフへと移す。 クリフもエルガも、優しく微笑んでいた。 ラファエルは、きっとここへ来てくれる。 そしてみんなに紹介しよう。 新しい仲間だ、と。 ティファは満面の笑みを浮かべ、自信を持って二人に応える。 「きっと来るよ。」 その答えに満足したかのように、釣られてクリフとエルガにも満面の笑みが浮かぶ。 新しい仲間を歓迎しよう。 悲しい過去を背負う彼を、仲間とともに支え、新しい道を歩いていこう。 ティファは一息つくと、外の空気を吸ってくる、と言って席を立つ。 一歩店の外に出ると、酒で火照った頬に心地よい夜風が当たる。 空を見上げると満点の星。 そして真上には、つい先日その姿を見せていたかつての満月が、今ではやや欠けて控えめに輝いている。 初めて彼を会ったときのことを思い返す。 まるで目に映る全てのものが敵であるかのように、荒々しく吹きすさぶ風のようだった。 しかし今は。 森で別れたときの彼は、そよ風のように柔らかく優しく、静かな風を纏っていた。 新しく虹の色に加わってくれた彼は、今どこで何をしているのだろう。 ティファは月を見上げ、共に戦った仲間のことを想っていた。 ひっそりとした街の外れ。 いつにも増して騒がしい酒場から明るい声が漏れる。 今日も、平和な夜が更ける。 そして、アルバートとリオーネの仲の良い口喧嘩は、遅くまで続いていた。
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