50:虹色の風

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遠くに連なる山々の頂がうっすらと明るみを増し、その間から朝日の欠片が覗いている。 森を抜けたところにある小高い丘に、みっつの人影とひとつの獣の影が見える。 その丘の前には広大な海が一望でき、後ろは人が踏み込むことがないであろう深い森が口を広げている。 見晴らしの良い丘の一部が盛り上がり、その周囲にたくさんの花が供えられていた。 そしてその前に跪く男の姿。 それを見守るかのように数歩下がった場所から男の後ろ姿に視線を送る男女の姿と、一頭の獣の姿。 徐々に明るくなる空は、夜明けが近いことを教えてくれる。 悲しく、長い死闘に決着がついた後、ラファエル達は森を抜け、フェリジアをこの丘に埋葬した。 森へ還ること。 それが彼女の最期の願いだったのである。 やがて、妻が眠る墓の前からラファエルがゆっくりと立ち上がる。 彼は今、何を思うのだろうか。 振り返り、ティファとアルバート、セロの元へと近付いてくる彼の表情は、とても穏やかなものだった。 「・・・貴方達のお陰で、全てに決着をつけることができた。感謝している。・・・それと、巻き込んでしまって、すまなかった。」 静かに、ティファとアルバートに対して感謝し、同時に謝罪する。 「そんな、巻き込んだなんて・・・私達のほうこそ、足を引っ張ってしまって・・・。」 ティファが困ったようにそれに応える。 「いや、二人がいなかったらどうなっていたか。助かったよ。二人は俺の恩人だ。この恩は忘れない。・・・ありがとう。」 ラファエルは微笑み、優しい声で二人に再度感謝を述べた。
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