2、小さな背中

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空はとても晴れていて、遠くには夏らしいもくもくとした入道雲が見える。 爽やかな夏空の下、その町の通りは沢山の人々で賑わい、活気に溢れていた。 木造建ての店が軒を連ね、大きい商店街のような空間を作り上げている。少し懐かしいような雰囲気である。 昼時ともなれば、あちらこちらから揚げ物や焼いた魚等の食欲をそそるような匂いが、腹の虫を刺激する。 そんななか、行き交う人達に紛れて、急ぎ足の少年がするりするりと間をすり抜けていく。 少年の手には野菜が入った紙袋が抱えられていた。 中身を落とさないように大事に抱えながら、人の隙間を見つけてどんどん進んでいく。 缶バッチのついたベージュのニット帽、右頬の絆創膏、襟足が長い金髪。 この地域では金髪が珍しく、少年――イチマツはちょっとした有名人だった。
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