牙のあと

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++ んー?と首を傾げ、その日一番に俺は悩んでいた。 あっ、こんにちはー。 俺の名前は藤光 狐兎苺って言います。 ここからは少し遠い森の中からやって来た……多分田舎者です。 兄が三人、じぃちゃんと父ちゃん母ちゃんとで住む、至って普通の妖狐。 この学園に入ってから、おれは沢山の血縁ではない人たちと散々関わって来た。 学園に入る時、兄ちゃん達は口を揃えて『お前は危なっかしいから不安だ』と言っていたけど・・ こうして難なく過ごせているのだから、多分大丈夫なのだろう。多分。 そんな俺が現在何を悩んでいるのかと言ったら…… 最近出会ったちぃ子(名前を名乗ってくれるまで『ちぃ子』って呼んでる)についてだ。 先生や冬美ちゃんとの会話を聞いている限り、どうやら彼女は〝黒〟と言うらしいのだけれど。 (聞いてないのに勝手に呼ぶのはルール違反だよな) と自分の中でちぃ子が名乗ってくれるまでのルールを作り上げ、今は知らないふりをしている。 ちぃ子の名前も知らない俺は、彼女の友達と言えない関係かもしれない。 彼女をただ困らせているだけなのかもしれない。 ――けれど。 ちぃ子が内包する闇に、俺は酷く惹き付けられて居た。 例えばオーちゃん(生徒会書記オーディン君)に否応無く惹かれる様に。 俺は神側でもなく悪魔側でもなく、その仲介者でもなく。 酷く曖昧な存在なのだ。 だから俺はきっと完全な何かに惹かれるのだと思う。
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