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ヤマダさんは肩を落とし、両手を膝の上で握り締めている。その目にはうっすらと涙が滲んでいるのだろうか。
「わしには、ハルちゃんを、弔ってやることも出来んのですか……」
子供の頃はきっと、「ハルちゃん」「にいさん」と呼び合う、本当に仲の良いきょうだいだったんだろう。何だか、切ないな。
「いや、当然じゃ、わしはハルちゃんを追い詰めたんじゃ。わしのせいで……」
「ふむ、少しはそういった言葉が出てきたか」
おや、やよいさんが顎に手を当て、何やら満足したようなご様子だ。
「あ、あの、途中で口を挟むようですけれど、このお仏壇には主人の両親もいらっしゃいますし、その、手放すようなことはちょっと……」
奥さんが控えめに言う。まあ確かに、そう簡単に供養を放棄する訳にはいきませんよね。やよいさん、あんなこと言ってどうするつもりなんだろう?
「ふむ、こちらはまだ分からんか」
まだ分からん? 一体何を? って、やよいさん立ち上がって大丈夫なんですか? って、しかも枕元のハリセンしっかり握ってるし! もう暴力沙汰は十分ですからやよいさん血迷う前に冷静になってくださいお願いします。
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