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「ハルコは悪霊じゃ」
凛、と冷たい声が駆け抜けた。
「叶わなかった想いに負け、自ら命を絶ち、それでも尚想いに囚われ、放っておけばあの炎で人死にを出していたかもしれぬ、余程質の悪い悪霊じゃよ」
氷のように冷たい現実。でも、目を背けてはいけない、現実。
「だが想像してみよ、この老いぼれ二人、もう先が何十年もある訳でもない。ハルコが執着したのはこの二人よ。もしハルコをこの者たちの親のように、せめて執着したこの二人が死ぬまでの間、丁重に祀り穏やかに眠れるように出来る誰かが他にいたら、この家に連れて来られることが無かったら、果たしてハルコは悪霊になったか?」
やよいさん、さっきヤマダさん夫妻を叩いたのは、それは。
「分かったか? ハルコを悪霊にしたのはこ奴らよ。単純にハルコの霊に怯えるだけならばまだ可愛いげがある、しかしこ奴ら、結局はハルコの存在が疎ましいのよ。ハルコの存在が面倒なのよ。鏡を引き取る話が上がった時思ったであろうな、忘れていた過去の汚点を今更どうしてまた、とな」
ヤマダさんはハルコさんをちゃんと供養するには奥さんに対して引け目を感じるし、奥さんは奥さんで表向きには何も知らないような振りをし続けてきたけど、でもやっぱりハルコさんはいない方がいいんだ、それがどんな形であれ。
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