第四話 焦げちゃうくらい熱い夏

90/93
前へ
/283ページ
次へ
「さあ、リョウ、他の者も、これが今日最後の仕事じゃ。しっかり手を合わせよ」  やよいさんは、僕が『ハルコ』さんを封じ込めた、焦げたように黒ずんでしまったお札を取り出した。そして仏壇の前で正座し、マッチを擦る。 「さあ、もう暴れたりするでないぞ。もう良いのじゃ、ゆっくり眠るが良い」  そっと語りかけながら、お札にマッチの火を移す。  お札を燃やす炎は、あの鏡のある部屋で『ハルコ』さんが出した炎とは随分違っていて、穏やかに燃え、そして消えていった。  僕はあの荒ぶる炎を思い返し、それが鎮まってくれるようにと、願いを込めて手を合わせた。
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

300人が本棚に入れています
本棚に追加