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「まあ上がってくれ。何もないがな」
私はニックから話を聞くために家に招待した。途中すれ違った人に異様な目で見られたが、気にしないでおこう。
「紅茶……いや、ジュースの方がいいか」
ジュースは私もよく飲む。甘いから朝に飲めば目が覚める。コーヒーなんかよりはよほど朝にうってつけの飲み物だと私は思う。
というよりは、私はコーヒーが飲めないだけなのだが。
「ほら」
「あ、ありがとう」
ソファにぎこちなく腰掛けているニックの正面に座り、ジュースを差し出す。ニックはそれを手に取り恐る恐る口にする。
「そんなに私が怖いか?」
「ブハ! ゴホッゲホッ」
図星か。というかこいつは怖いと感じる相手に頼み事をしたのか。鉄の心臓だな。
「べ、別にそういうんじゃないんだよ。たださっきからもの凄い顔で睨んでくるからさ」
睨む? 別に睨んでいるつもりはないんだが。ニックから見ればそう見えるのだろうか。
「そんなに私は睨んでいるように見えるか?」
気になるので聞いてみた。
「うん。ていうか自覚ないのかよ」
「私は無表情のつもりなんだが」
「その無表情が怖いんだよ。さっき怒鳴った時も顔そのまんまだったし」
おい待て、ニックを怒鳴った時はさすがに表情を変えたつもりだぞ。そこまで私は表情が動かないのか?
「はあ……さすがに落ち込んだよ」
「全然そうには見えないけどな」
こいつは私の心をえぐりに来たのか? 私を泣かせに来たのか?
「もういい。本題に入るぞ」
これ以上この話題を続けていたら私の心が折れるか私がこいつを追い出すかのどちらかになってしまいそうだ。さっさと本題の、さらわれたニックの仲間について聞くことにした。
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