EP.2「か弱き異能者」

4/15
前へ
/81ページ
次へ
ニックの話はこうだ。 ニックは同じような境遇の子供たち、具体的には捨てられた異能者の子供たちと協力して暮らす集団に属しているらしい。 そして一昨日、その集団にいる子供が四人さらわれた。 その時にはニックはいなかったようで、物陰に隠れて助かった他の仲間から聞いた話だそうだ。 その仲間たちをさらった誘拐魔の特徴は、全身黒ずくめであること、五、六人であったこと、そして。 「銃で武装していた、か」 正直、信じられない。まず異能者の子供が集まって生活していること、異能者という得体の知れない人間をさらうこと、そしてなにより、この町に銃で武装している人間が私以外にいることだ。 この町は殺人事件が異様に少ない。事件の回数を数回さかのぼればすぐに私の起こしたあの事件にたどり着くような回数だ。そんなある意味で安全な町で銃で武装をしている。 仮に本当だとするなら、それこそ私より警察に任せた方がいい。 「なにはともあれ」 現時点では情報が少なすぎる。その集団の居場所がわからなければ何もできない。 「情報収集だな、ニック、警察署に行くぞ」 「うん! ……え?」 ジョンならなにかしら知っているかもしれない。例え知らなくても協力はしてくれるはずだ。 しかし、いくら考えてもわからないことがあった。 (なぜ孤児を誘拐する必要があるんだ) 孤児では身代金も期待できない。身売りをするためか? それも考えられる。むしろそう考えるのが当然だろう。 (でも……) さらわれた子供たち全員が異能者。その事実に、少し嫌な予感を感じていた。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加