7人が本棚に入れています
本棚に追加
さっきから視線が痛い。
肉屋ではやたらと誤られるし、露天商には商品を隠されるし、大道芸人は私だけに帽子を差し出して金を貰おうとしなかった。
これら全部、今日に始まった事ではないが、さっきまで自分の身なりや容姿の事を考えていたのを思い出すとそれらが非常に気になる。
「待てクソガキィ!」
少しセンチメンタルになっていると、前方から怒声が聞こえた。
見ると、子供が一人小太りの男に追われていた。
「また盗みか」
この町は窃盗、特に万引きが多い。とはいっても景気が悪く仕事が無いということはなく、大抵は働かない怠け者か子供のいたずらだ。
今回も子供が追われている辺り後者なのだろう。そう思いながら私の横をを全力で駆け抜けて行こうとした子供の襟を掴んだ。
「ぐえぁ!?」
一瞬喉が締め付けられたのか、奇妙な声を発したが、そんなものは全く気にせずに襟を掴んでいる私の手を解こうとする。
「離せ! 離せよ!」
「何が離せだこのガキが!」
子供が暴れている内に息を切らした男がやってきた。男は子供を見るなり腕を振り上げ。
「がっ!」
殴った。
「おら!」
更に蹴った。幼い子供の体は簡単に浮き上がり、吹き飛ばされる。
尚も子供の方へ歩いて行く男を見て、私は男の肩を掴んだ。
最初のコメントを投稿しよう!