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「おい、やりすぎだ」
「ああ? 誰だテメェ」
男は私を睨む。子供はこいつの営んでいる店から一体何を盗もうとしたんだろうか。そもそも、こいつは何の店を営んでいるのだろうか。
「そこの子供を捕まえた良心的な一般人だよ」
「良心的な一般人が泥棒の味方か?」
「大人から一方的に殴られている子供の味方さ。たかが子供の万引きだろう? やりすきだ」
「うるせぇ、このガキに大人の厳しさってのを教えてやるんだよ」
「ほう、では私はお前に大人の余裕というのを教えてやろう」
言うのが先が手が動くのが先か、言い終わる頃には私は男の額に拳銃を突きつけていた。
「テ、テメェ、こんな所で銃突きつけてタダで済むと思ってんのか?」
口調は強気、だが明らかに身体が硬直している。無理も無い。突然銃口を突きつけられ平然といられる方が異常だ。
「これがそこの子供が味わっている感覚だ。もっともらしい理由と度を超えた暴力を受けて、少なくとも納得出来るとは思えないな」
「ぐ……わかったよ。わかったから銃を離してくれ」
恐らくこいつは全くわかっていないだろう。まあいい、あまりこいつに構っている時間も無い。
「今度からせめてゲンコツ一発にしとけ。反省してないようならもう一発打てばいい」
そう言って銃を男から離そうとした瞬間。
「そこまでだ!」
再び怒声。声のする方を見ると、警察官が銃をこちらに向けて立っていた。
「ここで子供が暴行されていると通報があった」
「そうか、ならちょうどいい。この男が犯人だ」
「この期に及んで何を言う! 大人しくしろ女、児童暴行及び不当火器所持で現行犯逮捕する!」
そう言われ、自分の状況を冷静に見返す。いや、見返さずともわかる。確かにこの状況でなら子供を殴ったのも私だと思われるだろう。
しかも。
「た、助けて下さい! 子供が殴られているのを止めようとしたら銃を突きつけられて!」
男はプライドが無いのか、あっさりと私に罪をなすりつけられている。
「チッ」
逃げたりしない方がいいだろう。銃をしまって手を上げる。
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