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「……なんなんだよ、全く」
ジョンが行ってしまったので、仕方なく私も出ることにする。また会う機会なんてあるのかはわからないが、別に無理に聞くような事でもない。
「荷物はこちらになります」
入り口に立っていた警察官が私に話しかける。私を逮捕した者ではない。勤勉で真面目といった雰囲気を持った好青年といった感じだった。
「すみません、こちらの早とちりで迷惑をかけてしまって」
「いや、いいさ。あの状況ではどう見ても私が犯人だ。こちらこそ妙な騒ぎを起こして悪かった」
警察官は小さな声ですみませんともう一度言った。
それ以降は特に会話もなかった。応接間に私の荷物が置いてあった。
とは言っても、荷物は銃と財布の入った白衣だけなのだが。
「ところで、あの子供は?」
「は、はい。身元がわかれば連絡が出来るのですが……」
警察官が口ごもる。しかし、私にはそれだけわかれば充分だった。
「捨て子、か」
「はい、そのようで」
捨て子。親から見放され捨てられた子供。私も成長したとはいえ、親の顔も知らない捨て子だ。
(ああ……そうか)
そうだ忘れていた。この町の万引きで一番多いのは働かない怠け者でも子供のいたずらでもない。
捨て子が、今日を生きるための食べ物を得るために盗みを繰り返しているのだ。
「つまり、異能者か」
「はい、恐らく」
子供が捨てられる最も大きな理由。それが異能だ。
異能。自然には到底不可能な超常現象を引き起こす人外の力。その力は人間はおろか生命全てに宿る可能性があり、異能を持つ野生の動物が凶暴化する例もある。
「身元がわからなかった場合はどうするんだ?」
「施設にも送れませんし、そのまま釈放するしか……」
「大変だな」
気の毒には思う。しかし手を差し伸べるような事はしない。一人を助ければ他の者も助けなければならない。中途半端な優しさは自分の身を滅ぼすだけだ。私は聖母ではない。捨て子全員を助ける事など、不可能だ。
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