プロローグ

3/10
前へ
/56ページ
次へ
 事の発端は今日の昼、友人のある言葉からだった。 「肝試しをやりたい」  9月も終わりに近づき夏の暑さはどこかへ消えたこの時期になにを言いだすのだと佐紀子は思った。 「だって夏って虫多いし、暑いし…秋口くらいのほうが涼しくて雰囲気あると思わない?」  友人のその台詞に納得できるような、できないような。  そして釈然とせず考えこんでいた佐紀子をおいてあっさりと肝試しの開催は決まってしまった。 佐紀子は自分を差し置いて事が決まったことも不満だったがそれ以上に納得できなかったのは佐紀子がその肝試しのコースを決める役割を任されたことだった。 「なんであたしが!」 「だって佐紀子、前に不気味な所が家の近くにあるとか言ってたじゃん」 「肝試しやってさ、そのまま佐紀子の家泊まっちゃおうよ」 「別に、泊まるのは構わないんだけど…」 「じゃ、決定」 「は?」  こんなとき押しに弱い性格は損なものだと痛感する。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加