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佐紀子は学校を終え、帰宅すると着替えもせず家を出た。肝試しのコースの下見をするためである。
『前に不気味な所が家の近くにあるとか――――』
先刻の友人の言葉を思い出す。話題作りの為だったのだろうか、以前の自分は随分と馬鹿なことを言ったものだ。
目的地にたどり着き、佐紀子は足を止める。
佐紀子が不気味だと感じ、肝試しのコースにすることにした場所、そこは佐紀子の家の裏にある小さな山だった。入り口にはハイキングコースが書かれた看板が立ててある。木が密集して薄暗い山だが山の道は整備され、ハイキングコースの順路も示してあった。そのためか特にこれと言った不気味さは感じなかった。
もとより佐紀子は山自体を不気味だと感じていなかった。
「逢魔ケ刻(おうまがどき)ねぇ…」
佐紀子は呟いた。
佐紀子は目を閉じる。幼い頃の思い出がまぶたに映し出された。
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