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祖母の言い付け通り佐紀子はその唄を覚えた。そして逢魔ケ刻、厳密に言えば午後6時にはこの山には近づかなかった。
幼い頃は祖母との約束だという名目で近寄ることはなかったが成長してからはその唄の不気味さからか、無意識に山を避けていた。
「………」
佐紀子は携帯を開いた。ディスプレイに表示された時間は午後5時19分。
祖母の言う逢魔ケ刻まであと約40分。
佐紀子は山に入ろうか考える。
「…行こう」
(ゴールにする場所は決まってるし、一本道だから迷うこともない。あれくらいの距離なら往復で10分くらい……行ける!)
「あんなの迷信、迷信!たかが唄でなにビビってんだろ!!あー馬鹿らしい!」
佐紀子は山に足を踏み入れた。
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