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そして冒頭に戻る。
道を完全に見失い、刻一刻と暗くなっていく山の中に佐紀子は閉じ込められた。携帯電話も先ほどから圏外で通じない。
遭難、という単語が佐紀子の頭をかすめる。
早くここから抜け出さねばと焦るがどうしようもできない。
「…っふー、…っふー」
呼吸が荒くなる。
遭難も恐ろしいが佐紀子の頭の中ではあの唄が反芻していた。
逢魔ケ刻に――――…
佐紀子は左右にぶんぶんと首を振る。
「あ、あんなもの迷信!子供を遭難させないために大人が作った嘘っぱちなんだから…!!」
自らを奮いたたせようと声を荒げるが表現し難い不安はどんどん広いがっていく。
佐紀子はその場に立ち尽くした。
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