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秋はいつの間にやら走り去り、入れ替わり訪れたのは冬。
京で過ごす冬は初めてではないが、慣れぬものは慣れぬ。
夏は纏わりつく暑さ、冬は骨の髄まで響く寒さ。
この二つの季節、外出が億劫になるのは仕方がないものだと思う。
「…………寒い」
今日は非番故、部屋に引きこもっていた。
借りてきた火鉢を抱き込み、
羽織は二枚重ね、
襟巻きはぐるぐる巻き、
かいまきを着込めば、寒さ対策は抜け目ない。
だが、それでも寒い。
かいまきを頭まで被って冷気を防ごうとした時、部屋の前に人の気配を感じた。
……この気配は……。
「一、今いいか?」
「!はい」
土方副長ではないか!
急ぎ服装を正そうとしたのだが、
「突然すまん。割りと急ぎの用なん……だ……?」
それより早く、土方副長は障子を開けてしまわれた。
鋭い瞳を丸めて、驚いておられる。
このようなみっともない格好を見られるなど……!
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