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「姫様が患者を連れてくるなんてめずらしい事もあるのですね。」
襖を開けた2、3秒後の第一声がその言葉だった。蓬莱山輝夜とは違う艶やかで落ち着いた声帯。そう、その声の持ち主こそこの永遠亭に住まう‘医者’だ。
「ま、ちょっと成り行きでね。有、これが私の従者兼医者の八意永琳(ヤゴコロエイリン)よ。」
「以後、お見知りおきを。」
「初めまして。俺は水無瀬有です。よろしくお願いします。」
「自己紹介も終わったことだし、私の役目も終わったし。部屋に帰るわね?永琳、あとは頼んだわ。」
「おまかせください。」
輝夜は2人の元から去っていった。永琳は姫様を見送ると目線を初対面の少年に向ける。
「さあ、貴方の用件はなにかしら?まあ、とりあえず座りなさい?」
有は指定された椅子に座る。そして目の前の女性医師を見据えて口を開いた。
「実は、俺、記憶喪失みたいで。妹紅さんが竹林で倒れていたって言ってたんですけど・・・その前の事がよく思い出せなくて・・・。」
「ふぅん・・・普通に考えれば記憶喪失で間違いない無さそうみたいね。」
「‘普通に’ですか?」
「そう、貴方の服装から観るに、貴方は外来人であると思うわ。」
「それ、さっき輝夜さんにも言われました。なんなんですか?その‘がいらいじん’って。」
「この世界の外側にはいくつかの世界が平行して並んでいるのよ。その世界からこの‘幻想郷’に迷い混んだ人間を‘外来人’と呼ぶわ。」
「‘幻想郷’・・・。」
「そうよ?幻想の如く平行世界から忘れられた存在、物質は幻想郷に来てしまう。それが‘幻想入り’よ。」
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