2nd episode

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「水無瀬有の幻想入りについては私は一切関わっていないわ。その子が勝手に幻想入りしただけ。」 「ってことは、やはり彼は幻想になったという事かしら?」 「そう考えるのが妥当だと思うわよ。」 「・・・・。」 永琳の言葉に八雲紫は頷いた。有はショックだったのか、それとも現実を受け止めているのか、はたまた現実を受け入れてもショックを受けているのか。顔を俯かせて動かなくなった。 「・・・記憶がないっていうことはどう説明つけるつもり?」 「さあ?私の管轄内ではないモノ。それこそ医者である貴女の分野でしょ?記憶が甦る薬とか作れないのかしら?」 「今までに記憶障害を持った患者さんはたくさん見てきたのだけれど、彼はちょっと違う気がするのよ。普通は、自分の名前とか全部忘れるモノなのだけれど、彼は名前を言えたわ。」 「ふぅん・・・そういうモノなのね。じゃあとりあえず彼は貴女に任せるわ。私もちょっと忙しい身の上だから。じゃねー。」 八雲紫もとい、幻想郷の大賢者は手を振りながらニコニコと笑いスキマに消えて行った。それと同時に別の空間もなくなり元に戻っていた。 「任せられても困るのだけれど・・・。水無瀬有、そういうことだから一応貴方専用の薬を作るから一晩待ってくれない?」 「はい、わかりました。」 「あら、案外元気あるじゃない。よかったわ。」 「まあ、落ち込んでもしょうがないですし。自分の運命を受けいるしかないかなと。」 「受け入れるしかない・・・随分と強いのね。」 「強くなんかないです。ただ、そうした方が楽なだけで。流れに身を任せるだけですから。」 「・・・そう、とりあえず今日はここに泊まっていきなさい。その方が安全だし薬もすぐ渡せるから。」 「わかりました。ありがとうございます。」 こうして有は、永遠亭に泊まることになった。 もうすぐ陽が落ちて月が夜空に満ちる時間帯へと進もうとしていた。
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