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目を開くとまず視界に入ったのは見覚えがない天井だった。どこぞの中学生も同じような事を考えそうな一文だが、知らないモノは知らないのだ。それが人間というモノなのだと少年は布団の中で思った。
まだ寝ぼけている頭を無理矢理働かせ自分の状況の確認作業に入る。確か昨日は、永琳さんに「薬を渡すために一晩待ってくれ」と言われ、部屋で待つ間は縁側で輝夜さんと他愛もない話をして・・・。
有は布団から上体を起こして数分後に理解した。理解というか確認だ。確認が終わっただけ。
「・・・爽やかな朝だな。」
「有?起きてるかしら?」
タイミングを見張らかってなのか、それとも偶然なのか、襖から輝夜の声が少年に向けられた。
「あ、起きてます。」
「もうすぐ朝ごはんだから呼びにきたのだけれど。」
「わかりました。支度したら直ぐに行きますね。」
「・・・まあ、いいわ。場所は診察室の隣だから。待ってるわよ。」
足音が遠退いていく音だけが残る。有は布団から完全に立ち上がり身嗜みを整えながらおもむろに部屋の中をグルッと見回して見ると、一点だけ色の違う場所があった。それは一目でわかる。服だった。綺麗に折り畳まれた服がそこにあったのだ。
有は近づいて広げてみる。大きさは男性用か、色は白の着物に黒の袴。誰かが用意してくれたのか、あとでお礼を言わなければ。
今まで来ていた服を脱いで、それに着替える。中々としっくりきていい感じだ。今までの服はどうしようか、とりあえず折り畳んで置いておいた。寝癖はまだ残っているがあまり気にする程度ではないから、有はようやく部屋を後にした。
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