2nd episode

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一瞬だった。有が椅子から離れ倒れてしまった。輝夜はその様子を数秒見つめると、途端にソワソワし始めた。薬を与えた永琳も予想外の反応に戸惑いを隠せていない。 「え!?永琳!!これどういうこと!?」 「私にも訳がわかりません・・・。ですが、薬はちゃんと作ったはずですので心配無用かと。とりあえず、意識が戻るまで布団に寝かせて置きましょう。」 その頃、有は、正確には有の意識は真っ暗な空間の中にポツンと存在していた。手を動かしてみる。ちゃんと動く事を確認する。足を動かしてみる。ちゃんと動く。 「なんなんだここは・・・。」 辺りを見回してみてもやはり真っ暗なだけで自分の姿だけはっきりと眼で捉えることが出来る妙な空間。 「誰かいませんかー?輝夜さーん!永琳さーん!」 声は帰ってこない。そもそも自分が声を出したかも怪しい。普通なら自分の耳で自分の声が確認出来るのだが、聞こえなかった。 有は段々と恐くなり始めていた。 戻って永遠亭では、倒れた有の体を部屋へと運び布団に寝かせていた。輝夜は心配なのか正座しながら有を心配そうに見つめている。その様子を襖の隙間から眼を覗かせて観察する二匹のウサギ。 「てい、もうやめようよ・・・。また怒られちゃうよ?」 「姫様のあんな姿もう二度と見られないウサよ?」 「それもそうだけど・・・。」 「もうちょっとだけウサ。この様子を観察してブン屋に情報売れば儲けウサ。」 「あんた最低ね・・・。イタズラにもほどがあるわよ?」 「まったくね、これはお仕置きが必要かしら?」 二匹のウサギは体をビクッと震わせる。 「こんなところで何をしているのかしら?二人とも。」 「し・・・師匠?違うですこれは・・・水無瀬さんの様態が心配で・・・。」 「そうウサ。だから様子を見ていただけウサ。」 「へぇ、それでブン屋に情報を売るとお金になるのかしら?」 永琳の顔が段々と狂気を帯び始める。ウサギたちはガクガクと体を震わせながら必死に弁解を続けるも、悲しく儚く散ったのだった。
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