1st episode

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曇天の空からは無数の細かい水滴が落ちて、辺りの景色は覆いつくさんばかりの竹が生え渡る。ざーざーと降り注ぐ雨に打たれながら少年は地べたに倒れていた。 「・・・・・・・・・・。」 水滴は倒れこむ少年の頬を刺激するが一向に反応を見せない。意識がないのか、または死んでいるのかもわからない。 「・・・ん?人間・・・?」 雨が降りしきる竹林の中に傘も差さずに歩く少女が1人。長く白い髪を靡かせて少年に近づき、じーっとその様子を見つめている。 「迷って行き倒れでもしたのか・・・。たくしょうがねぇ人間だな・・・。」 はぁ、と一つため息をつくと少女の手には火の玉が出現した。雨にも関わらず燃え続ける火の玉は少年に向けられ 「悪く思うな人間よ、ちゃんと成仏する手伝いをしてやるだけだからな。」 「ん・・・。」 火の玉が少年に放たれようとした時、かすかにだが声のような音が聞こえた。それと同時に指も動いた気がした。それを彼女は見逃さない。 「なんだ、まだ死んでないのか・・・。」 火の玉は静かに消滅して辺りを見回し、少女は苦虫を噛んだような顔して考え込んだ。その時間は意外と長く、その間も少女は困ったような顔で少年の体の周りをグルグルと歩き回りながら思考をまとめる。 「さっき輝夜と殺りあったばっかだしな~・・・。永遠亭には行きたくねーし・・・。」 そして一つの結論が決まったのか、少女は長いため息を吐きながら面倒くさそうに意識がない少年の体を軽々と背負いその場を去って行った。
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